福岡市と糟屋郡を結ぶJR香椎線は、観光客にはあまり知られていない“地域の歴史を乗せた鉄道”です。明治時代に誕生し、石炭輸送路線としても活躍した香椎線に乗って、宇美八幡宮を目指す歴史探訪の旅へ出かけてみませんか?
本記事では、香椎線の見どころや車両の進化、そして沿線に広がっていた粕屋炭田の歴史をご紹介します。
香椎線とは?|福岡東部をつなぐレトロな鉄道
JR香椎線(かしいせん)は、福岡市東区の西戸崎駅から香椎駅を経由し、糟屋郡宇美町の宇美駅を結ぶ全長25.4kmの路線です。観光地としては目立たないものの、地元に根差した重要な鉄道で、のどかな車窓風景とともに、実は深い歴史を持っています。
現在の車両は、JR九州の蓄電池式電車「DENCHA(デンチャ)」。充電して走るこの新しい電車は、香椎駅で充電後に出発し、非電化区間の宇美駅まで静かに走行します。かつては、ディーゼルのキハ40系が唸る音と排気ガスを響かせていたこの路線も、すっかり近代的に進化しました。
また、2023年3月からは一部時間帯で「全自動化」運転が始まり、運転士以外の乗務員が不在となるなど、新たな取り組みも注目されています。
香椎線の歴史をひもとく|炭鉱とともに走った鉄路
香椎線の起源は、1904年(明治37年)に開業した博多湾鉄道にさかのぼります。最初に開通したのは西戸崎駅〜須恵駅間で、翌年には宇美駅まで延伸。さらに1909年には、酒殿駅から志免方面への貨物支線が建設され、のちに「勝田線」として独立します。
この路線の最大の役割は、志免町・須惠町・宇美町などで採炭された粕屋炭田の石炭を西戸崎港まで運ぶ“炭鉱鉄道”でした。沿線の地域発展は、この鉄道によって支えられていたのです。
その後も運営会社は変遷を重ね、1920年には「博多湾鉄道汽船」、1942年には西日本鉄道(現・西鉄)に統合され「糟屋線」に。戦後は国鉄を経て、1987年からJR九州の路線として現在に至ります。
特筆すべきは、1985年以降、起点と終点の両方で他路線との接続がないという非常に珍しい“独立路線”となった点。全国でもほぼ例がありません。
宇美八幡宮への旅路|今も残る歴史の痕跡
今回の旅の目的地、宇美八幡宮は古代からの由緒を持つ神社。香椎線を活用して訪れれば、ただの観光だけでは味わえない“地域の歴史”が自然と伝わってきます。
昭和まで使われた駅舎や、かつての貨物路線跡、そして古くからの町並み…。宇美駅で電車を降りた瞬間、どこか懐かしい時代が香ってくるようです。
香椎線の未来と、歴史観光のすすめ
香椎線は単なる交通手段ではなく、地域の記憶を運ぶタイムトンネル。古き良き時代と新しい技術が共存するこの路線は、観光や歴史探訪にもぴったりの舞台です。
福岡観光とあわせて、香椎線に揺られながら“ディープな地域史”を感じてみてはいかがでしょうか。